「CHUBBY GROOVE」考察前編-眠らない語り手

  寝たり起きたりしているなあ。 これが、「CHUBBY GROOVE」を聴いた時の最初の印象だ。 睡眠に関するワードや、睡眠を想起させる状況が描かれている曲が多い。 “あ、起きてる”とか“今度は眠そう”とか、“目を覚ましたがってるなあ”なんて思いながら聴いていた。 こんなことを言うと誰かに怒られるかもしれないが、歌詞についてはかなり躁鬱的なものもあるように感じた。 躁鬱と言って悪けれ…

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再開します。

  2002年頃から2008年2月まで、B'zephy(ビーゼファー)というサイトあるいはブログで、稲葉さんの歌詞分析をささやかに公開していました。 閉鎖してからちょうど9年経過するんですね。 ブログを閉鎖してからも、私は今日までずっと稲葉さんの歌を聴き続けてきました。 気が付くと稲葉さんの歌や言葉はあまりにも私の人生と分かちがたく結びついていました。 人生において重大な決断をするときに…

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「BURN」― 滅びの美学

  稲葉さんは時々お坊さんのような歌詞を書く。 それが私は好きだった。 あるがままという考え方だったり、「どんなジャンルもない」って考え方には、仏教的なものの考え方や感じ方と通底するものがある。 「夢だろうすべては生まれてくること死ぬこと」なんてのもそうだった。 稲葉さんがどこまで意識しているのかどうかは分からないけれど、博学な稲葉さんのことだし、今回は「あえて」ってところがあるような気…

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「THE CIRCLE」-破滅と再生の技 潜在的可能性への旅

  B'zの曲には、『ヒミツなふたり』の「あ~しょうがないね」など、へんてこなコーラスがいくつもあります。 歌詞にするにしては斬新と思えるような言葉を音楽に乗せるのは、稲葉さんのお得意の作詞法ですよね。 今回のアルバム、『THE CIRCLE』収録の『白い火花』の“もったいないね~”というコーラスを聞いた時も、私はやっぱり相当へんてこな感じがしました。 FM FUJIのサタデーストームとい…

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「ARIGATO」―宿命の受容

  『ARIGATO』(2004年)は、愛する者の存在により、自分の宿命を受け入れていく物語だ。 宿命とはこの場合、語り手が「僕のゆく道」を進んでいくことだ。 言うまでもなく「道」とは、自分がどのように生きていくかということである。 これまで稲葉さんの歌詞には、“自分の道を歩むこと”について何度も書かれてきたが、 稲葉歌詞では、どんなに心が通じ合った人でも、同じ「道」を進んで…

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「shower」「TINY DOROPS」「Okay」に見る死生観

  稲葉さんのなかで、死と、水の小さな粒は、意識的にであれ、無意識にであれ、関連づけられたものなのだろうか。 「TINY DOROPS」は2009年のアルバム「MAGIC」に収録されている。 この曲で、死者は「美しい丸い粒」、「しずく」と表現されている。 97年に「Shower」で、死について(おそらくこのとき初めて)稲葉さんが歌ったときは、「優しく僕を叱りながら 小さな粒がふりそそぐ…

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『The 7th Blues』―喪失からの再生

  『The 7th Blues』は私が最も愛するアルバムだ。 当時のメロディラインや、ブラスサウンドを多用したアレンジ、 そして稲葉さんのお腹の底から叫びをあげるようなヴォーカルなど、なんといっても楽曲の魅力があるけれど、 ここでは『The 7th Blues』の歌詞について語ってみたい。 7thと同時期の『MOTEL』と『Mannequin Village』も視野に入れる。 『Th…

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赤い大地への憧れ 第三章 荒野を走り続けた先に

  第二章では、『MR.ROLLING THUNDER』、『赤い河』、『WILD ROAD』の歌詞について考察しました。 第三章では、『RUN』、『愛なき道』、『arizona』を見ていきます。 『RUN』と『愛なき道』は、主人公が一人で大地を駆けるのではなく、身近な他者と共に駆けています。 荒野を走り続けた先に、主人公にとって大切な何かが見えてくるという構造は、第二章で見てきた曲と共…

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赤い大地への憧れ 第二章 赤い大地からの再出発

  第一章では、『まだ見ぬホテルへ』の解説に触れながら、赤い大地への憧れを確認しました。 “赤い大地を駆け抜ける旅”をテーマとした作品の語り手は、走り続けるという過剰な行為の先で、自分の中の大切なことに気付き、生きることへの希望や気力を獲得していきます。 第二章では、『MR.ROLLING THUNDER』、『赤い河』、『WILD ROAD』の歌詞を見ていき、語り手が到達する大切なことと…

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赤い大地への憧れ 第一章「まだ見ぬホテルへ」解説に触れて

  本稿では、稲葉さんの歌詞に色濃く見られる赤い大地への憧れについて考察しています。 第一章 『まだ見ぬホテルへ』解説に触れて 平成15年5月に稲葉なおとさんのエッセイ「まだ見ぬホテルへ」が新潮社から刊行されました。 稲葉なおとさんは、B'zの稲葉浩志さんの従兄弟にあたる方です。 そしてこの新刊「まだ見ぬホテルへ」の解説を稲葉浩志さんが書いていると知って、私はさっそくなおとさ…

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『Peace Of Mind』考察4

  目次 1、奪われた心の平穏 『SAIHATE HOTEL』を軸に 2、『Peace Of Mind』が招待するうらがえしの世界 3、二項対立を否定する「オアズケ」的思考 4、天秤を越えて宇宙へ 4、天秤を越えて宇宙へ 幸せか不幸か、勝ちか負けか。あれかこれか。どちらか一方にカテゴライズすることにとらわれ、時に人は心の平穏を互いに奪いあい、自由をなくしていきます。 こうし…

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『Peace Of Mind』考察3

  目次 1、奪われた心の平穏 『SAIHATE HOTEL』を軸に 2、『Peace Of Mind』が招待するうらがえしの世界 3、二項対立を否定する「オアズケ」的思考 4、天秤を越えたあるがままの宇宙へ 3、二項対立を否定する「オアズケ」思考   幸せを求めていたはずなのに、一つの価値観にとらわれるあまり、気付かないうちに自他の心の平穏を奪っていた。 裏返しの世界を…

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『Peace Of Mind』考察2

  目次 1、奪われた心の平穏 『SAIHATE HOTEL』を軸に 2、『Peace Of Mind』が招待するうらがえしの世界 3、二項対立を否定する「オアズケ」的思考 4、天秤を越えて宇宙へ 2『Peace Of Mind』が招待するうらがえしの世界 「誰もが線を越えたがる 禁じての横恋慕 甘い香りにひかれたら 戦争のスイッチはON」(『横恋慕』) 横恋慕…

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『Peace Of Mind』考察 1

  目次 1、奪われた心の平穏 『SAIHATE HOTEL』を軸に 2、『Peace Of Mind』が招待するうらがえしの世界 3、二項対立を否定する「オアズケ」的思考 4、天秤を越えて宇宙へ 1、奪われた心の平穏 まずは、社会的な視点から『SAIHATE HOTEL』を考察していきますが、『SAIHATE HOTEL』は社会的な視点からだけでなく、身近な人間関係が描かれたも…

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「FRIENDS」ストーリー分析3

  「FRIENDS」ストーリー分析 目次 第1回 『いつかのメリークリスマス』~『Love is ...』 第2回 『恋じゃなくなる日』~『SEASONS』 第3回 『どうしても君を失いたくない』~ラスト ________________________________________ SCENE5.『どうしても君を失いたくない』 「狂いなく季節は繰り返し 新しい冬がまた…

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『FRIENDS』ストーリー分析2

  「FRIENDS」ストーリー分析 目次 第1回 『いつかのメリークリスマス』~『Love is ...』 第2回 『恋じゃなくなる日』~『SEASONS』 第3回 『どうしても君を失いたくない』~ラスト ________________________________________ SCENE3 『恋じゃなくなる日』 「恋という形のために壊れるものがあること 知っている…

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『FRIENDS』ストーリー分析1

  「FRIENDS」ストーリー分析 目次 第1回 『いつかのメリークリスマス』~『Love is ...』 第2回 『恋じゃなくなる日』~『SEASONS』 第3回 『どうしても君を失いたくない』~ラスト ________________________________________ 『FRIENDS』(92年)は、アルバム全体で一つのストーリーを形成しているコンセプトアルバムで…

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