稲葉浩志が「会いたい」と歌うとき

  「会いたい」という言葉が好きだ。 誰かに会いたいと言われるのも、稲葉さんが歌うのを聴くのも好きだ。 「また会いましょう」でも「会えたらいいね」でもなく、「会いたい」と人が言うとき、そこには今すぐに会いたいという切実な思いがこめられていると思うからだ。 ここでは稲葉さんが「会いたい」と歌っている作品について考察していく。 考察の終盤で「Man Of The Match」を軸に稲葉歌詞の…

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赤い大地への憧れを語る稲葉さんの発言まとめ 92年~2006年まで

  稲葉さんがアメリカの大地への憧れについて語ったことをまとめてあります。 92年から2006年までの稲葉さんの発言その他です。 会報やツアーパンフやテレビ番組、雑誌のインタビューなどをかき集めて2006年に作成しました。 見逃しているものもあると思います。 当時私的な日記に書きとめておいたものを引っ張り出したので、ちょいちょい入れてある自分の感想がアホ丸出しですが…。 200…

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「symphony#9」-そのエロス、祈り、畏れ

  「symphony#9」(2016年)の「あなた」は、生々しい肉体を感じさせない存在である。 「止まないsymphony 切ないmelody 朝な夕な弾けて飛び散る」 「あなた」(あるいはその声)は、「symphony」(交響曲)であり「melody」(旋律)であると語り手は繰り返す。 交響曲と旋律はどちらも音楽的要素である。 音楽には形がない。聴くことはできても、手で触れる…

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ぬくもり至上主義

  稲葉さんの歌詞においては、言葉も約束も不完全なものであり、何よりも手触りやぬくもりが信じられてきた。 稲葉歌詞は、ほとんどぬくもり至上主義と言ってもいいほど、ぬくもりは最上級のものとして示されている。 「CHUBBY GROOVE」(2017年)収録の「AISHI-AISARE」で、語り手は「君」の「ゆずれない感触」を取り戻そうとしている。 感触とは、手触りであり、ぬくもりを感じることだ。…

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「シラセ」試論 内在化する「あなた」

  知らせを聞いて、人は“ああ、そうなんだ、”と今まで気づかなかったことに気付きます。 シラセとは、気付きをもたらすものです。 「シラセ」の語り手は、シラセを受け取り、あることにはっきりと気付いていきます。 「陽は昇り 何もない朝 風が吹いて 何か囁いた なぜだろ 感じてる あなたのぬくもりを これは淡いゆめなの?」 時は「朝」、後半に「揺れるカーテン」「遠くから聞こえるクラ…

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「哀しきdreamer」二項対立の価値判断を越えて

  稲葉さんの歌詞の内容的な特徴を挙げよ、と言われたら、“あるがまま志向”と、“ぬくもりの完全性”と、“主体変容の意志”、そして“赤い大地への憧れ”と私なら答えます。 これらが稲葉さんの歌詞の核となる感覚だと考えています。 『哀しきdreamer』には、ものごとを価値判断することを否定し、ありのままに受け止める姿勢(あるがまま志向)が提示されています。 稲葉さんの歌詞のなかでも、かなり…

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「LOVE PHANTOM」-悲劇の発端とその様相

  『LOVE PHANTOM』(96年)はファンがあっと驚くことを狙って製作された曲でした。 『“BUZZ!”!THE MOVIE』というライブビデオでは、様々な演出を凝らした『LOVE PHANTOM』の演奏シーンを見ることができます。 オペラ座の怪人のような衣装を稲葉さんが着て、高いところに昇っていきます。 まだ見たことのない方々にネタバレにならないよう、これ以上詳しく書くことは控えてお…

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「志庵」-主体変容の意志 己から惑星へ

  稲葉さんの歌詞はまず自分が変わろうとする姿勢、主体変容の意志が示され続けてきました。 「自分のせいだと思えばいい そして自分を変えればいい」(「Time Flies」09年)はその最もわかりやすい一つの例です。 2017年現在もそれは変わりません。稲葉さんの歌詞では、何か困ったことがあったとしても、決して人を変えようとせず自分が変わるし、人のせいではなく全部「自分のせい」、とされてきまし…

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作者としての稲葉浩志-「意味なんかないんだよ」発言を中心に。

  以前、稲葉さんはMCで「ギリギリchopの本当の意味とは」というネタを自らふっておきながら、「意味なんかないんだよ~」(「Brotherhood」のDVD)と語りました。 しびれましたねえ。 もうずいぶん昔のことになるんですね。 でも、今も稲葉さんのスタンスは変わってないと思います。 偉そうな感じになってしまって恐縮ですが、稲葉さんのこの手の発言は非常に稲葉さんの聡明さを物語っている…

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「FRIENDSⅡ」―ドアをめぐるオムニバス

  「FRIENDS」はアルバム全体で一つの物語を形成していますが、「FRIENDSⅡ」(96年)にはそうしたコンセプトはありません。 しかし、一曲目「FriendsⅡ」は、「FRIENDS」の「Prologue Friends」がアレンジされたものであり、このことは「FRIENDSⅡ」がある点においては「FRIENDS」を引き継いでいることを物語っています。 ある点とは、冬という季節です。 …

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B'zephyr 歌詞分析のコンセプト

  音楽の楽しみ方は様々です。 たとえば、歌詞に自分の実体験や心境を重ね合わせて楽しむ。そして環境や心境によって、自分にとって歌詞の意味が様々に変化するのは、音楽の魅力の一つです。 そしてまた、歌詞について考察するという楽しみ方もあります。 稲葉さんの歌詞にはどんな特徴があるのか。どんな表現によって書かれているのか。 登場人物のどんな心が描かれているのか。どんな考え方が示されているのか。…

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「静かな雨」―訳アリな大人のファンタジー

  『静かな雨』(作詞 稲葉浩志 マキシシングル『KI』収録 VERMILLION RECORDS 2003) はじめに 誰もが一度は、日常のふとした時に、楽しい物語を思い描いたことがあるのではないでしょうか。 たとえば私は、ファンクラブで予約したライブのチケットを待っている時などに、もしもM&Gに当たったらB'zのお2人に何を話そう!なんて楽しい空想をします。 これではただの妄想、かも…

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「マグマ」という名の衝動―マイナスからゼロへのシフト

  稲葉さんは多くを語らない。だが、稲葉浩志の作品は饒舌に語っている。 もちろん、歌詞の内容がノンフィクションであるということではない。 しかし、ファーストソロアルバム「マグマ」には稲葉さんに固有なるものがより濃厚に、より親密な形で表れているように思う。 セカンドアルバム「志庵」リリース時、BS特別番組におけるインタビューで稲葉さんは、「マグマ」制作時には心の底からまさにマグマのように…

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「CHUBBY GROOVE」考察後編-雄風を感じる時

  前回、「CHUBBY GROOVE」の語り手は、ローからハイにスイッチを切り替えるために、意識的に方法を選択していると書いた。前回は主に「BLINK」を中心に考察した。(「CHUBBY GROOVE」考察前編-眠らない語り手) 今回は語り手のとった方法を具体的に見ていく。 1、寝ない。(「SAYONARA RIVER」「OVERDRIVE」「BLINK」) 2、やめる(捨てる)。 …

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