『FRIENDS』ストーリー分析1

「FRIENDS」ストーリー分析 目次
第1回 『いつかのメリークリスマス』~『Love is ...』
第2回 『恋じゃなくなる日』~『SEASONS』
第3回 『どうしても君を失いたくない』~ラスト
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『FRIENDS』(92年)は、アルバム全体で一つのストーリーを形成しているコンセプトアルバムです。
そこに描かれているのは、冬の風景とともに展開されていく、一組の男女をめぐる物語です。
「僕」の複雑な気持ちの揺れを通して、 過去から現在に至るまでの、「君」との関係の変容が語られています。

まず、物語のおおまかな流れを確認します。
『FRIENDS』は、プロローグに始まり、六つのシーンから構成されています。

・Prologue Friends
プロローグは、最終的に主人公が「君」との関係が「Friends」(友達)となったことに気付いたことを意味しています。
物語全体の時系列としては、プロローグは主人公の“現在”であり、『FRIENDS』の物語は“現在”から過去を回想するという形で語られていきます
このことについては最後に詳しく解説します。

SCENE1. いつかのメリークリスマス
一人になった主人公が、「君」と一緒に過ごした幸せな「いつかのメリークリスマス」を回想する。同時に、今の自分には帰るべき場所がないことを、深い孤独とともに感じてしまう。

SCENE2. 僕の罪
主人公は「君」に会いたいと強く思うようになり、ついに再会する。

SCENE2-2. Love is ...
「君」に会いたいと思う今の自分の気持ちは、恋なのか?愛なのか?しかし、そもそも“愛とはいったい・・・?”主人公は愛とは何かを自問する。

SCENE3. 恋じゃなくなる日
主人公は未だに“愛とは・・・?”という自問に答えを出せずにいる。しかし、彼はある日、「君」への気持ちが昔と同じ恋愛感情ではないことにはっきりと気付く。

SCENE4. SEASONS
一年の時が流れる

SCENE5. どうしても君を失いたくない
主人公は、「君」が喜びも悲しみも分かち合えるかけがえのない大切な存在だと強く感じる。恋だとか愛という呼び名など関係なく、ただ「どうしても君を失いたくない」という気持ちが溢れている。

6,いつかのメリークリスマス(Reprise)
「君」との関係が友達となったことに気付いた主人公は、穏やかな気持ちで再び「いつかのメリークリスマス」を回想する。

以上がアルバム全体の流れです。
このページではSCENE2-2.『Love is ...』までの物語を分析していきます。
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SCENE1『いつかのメリークリスマス』

「ゆっくりと12月のあかりが灯りはじめ 慌しく踊る街を誰もが好きになる」


物語は、一人になった主人公が過去の幸福だった「いつかのメリークリスマス」を回想するところから始まります。

「僕は走り 閉店まぎわ 君の欲しがった椅子を買った 荷物抱え電車のなか ひとりで幸せだった」
「誇らしげにプレゼントみせると 君は心から喜んで その顔を見た僕もまた素直に君を抱きしめた」

主人公は「君の欲しがった椅子」をどうしても彼女にプレゼントしたいと思っていました。
ここには「いつかのメリークリスマス」における「僕」と「君」の関係が象徴的に表れています。
「椅子」とは、そこに腰をおろして休むものです。
「椅子」は、安心できる居場所の比喩ととらえることができます。
「君の欲しがった椅子」を、主人公がプレゼントするということは、彼女が心の居場所を彼に求め、彼もまたそれに応えたということでしょう。

「いつまでも 手をつないでいられるような気がしていた 何もかもがきらめいて がむしゃらに夢を追いかけた」
「君がいなくなることを はじめて怖いと思った 人を愛するということに 気がついたいつかのメリークリスマス」


彼はこの日「君がいなくなることをはじめて怖いと思った」。自分がどんなに「君」を必要としているかということに、初めて気がついたのです。
この時、彼なりの「愛」というものへの答えが出ていました。
「人を愛する」こととは、自分が誰かを心から必要とし、決して失いたくないと思うこと。そして、自分自身が、誰かの安心できる居場所となることであると。

「何もかもがきらめいて」世界が色彩豊かに感じられたのも、「がむしゃらに夢を追いかけ」ることができたのも、「君」がいつでもそばにいてくれたからです。
「君」という存在がいてくれたから、彼は怖れることなく「夢」に向かって一生懸命になれたのです。
「君」が「僕」に心の居場所を求めたと同じように、「僕」もまた「君」を強く必要とし、「君」に居場所を求めていました。

彼らが夫婦であったのか、恋人であったのかは明らかにはされていませんが、プレゼントを贈るシーンや、「何もかもがきらめいて」いた、という心境からは、二人が恋愛感情的なときめきや情熱を持っていたことが伝わってきます。
ときめきの中でお互いの愛情をしっかりと感じていた幸福な「メリークリスマス」だったのです。

しかし、この幸福な思い出の中にも、二人の別れは暗示されていました。

「部屋を染めるろうそくの灯を見ながら 離れることはないと 言った後で急に僕は何故だかわからず泣いた」

何故、彼は涙を落としたのでしょう。
「いつまでも手をつないでいられるような気がして」いた一方で、彼はいつか別れが来ることを心のどこかで感じていたのかもしれません。
このおぼろげな予兆は、哀しくも実現してしまいます。
この幸福なクリスマスからしばらくの時を経て、二人は別れました。

互いに恋しあいながら、それでも最後に別れを選ばなければならない理由が彼らにはありました。
(その理由は、SCENE2『僕の罪』で明かされます。)

季節がめぐり、一人になった主人公にまたクリスマスがやってきます。
街はあの時と同じように浮かれ騒いでいますが、「君」はもう、主人公を待ってはいません。

「立ち止まってる僕のそばを 誰かが足早に 通り過ぎる 荷物を抱え 幸せそうな顔で」

あの時の自分のように、「幸せそうな顔」をして誰かが通り過ぎていきます。
その「誰か」には帰るべき場所と、迎えてくれる人がいるのです。
「立ち止まってる僕」という言葉が象徴するように、主人公は今、帰るべき場所、自分を暖めてくれる居場所を失っています。
主人公は今、賑やかな街の中で、幸福そうな人々を横目に見ながら、自分の孤独と虚しさとを、一層強く感じています。
そして、深い孤独と虚しさの中にあって、心の隙を縫いながらある一つの強い思いが溢れてきます。

「君」に「会いたい」、そう思ってしまうことが「罪」であることを「僕」は知っているけれど、という思いです。


SCENE2『僕の罪』

「やめた煙草に手を出すように 君に電話をかけている僕は 居心地のいい場所だけを 探して歩くやつなのか心の隙を縫いながら 言葉があふれてくる 『会いたい』」


 “別れてしまった「君」に「会いたい」。失ってしまった「居心地のいい場所」、自分を暖めてくれる居場所が欲しいから”
そう思ってしまうことは、「僕の罪」だと彼は思っています。


「やりたいことやるためだと それぞれの道を選んで別れた」

二人が別れたのは、「僕」と「君」が、互いの「夢」をそれぞれに叶えるためでした。
主人公が「君」を心の支えにして「夢を追いかけ」ていた時、「君」は「やりたいこと」ができずにいたのでしょう。
恋愛の初期には、「君」は“自分の夢を妥協してでも彼を支えてあげたい”と献身的な気持ちを持っていました。たとえ自分の「やりたいこと」ができなくても、「夕食」を作りながら彼の帰りを待つような日々が彼女の幸せだったし、主人公もまたそういう日常を望んでいたのです。

しかし、二人の日々を続けるなかで、いつしか「君」は「やりたいこと」ができないことに耐えられなくなってきてしまったのでしょう。
一方、主人公は自らの「夢」を叶えることに集中するようになり、「君」を心から思いやることを忘れてしまいます。
二人は、お互い恋しあっていながらも気持ちのズレが生じて、憎みあうわけじゃないのに傷ついていったのでしょう。
彼らは、自分を暖めてくれる心の居場所を失ってでも、「それぞれの道」を選び、「夢」を叶えようとしました。
彼らは深く傷つきながら、別れを選んだのです。

なぜ私がこのように解釈するかというと、主人公が自分自身の気持ちと行動について「罪がはじまってくりかえす」と言っているからに他なりません。
主人公は今、「居心地のいい場所だけ」を探して「君」を求めてしまう自分の身勝手な気持ちを「僕の罪」と感じているわけですが、注目すべきは、その「罪」が今「くりかえす」と表現されていることです。
つまり、主人公は「君」に安らぎだけを求めてしまうという同じ「罪」を、過去において犯してしまっていたということなのです。

「I know I know わかってる まだまだ時は十分に過ぎていない 僕だけのフライングだね」
「Don't you know? 知っているはず 完全に僕の罪なんだ 罪がはじまってくりかえす」


 “自分の身勝手で「居心地のいい場所だけ」を求めて、「君」に会いたいと思っている「僕」は、安らぎだけを求めて「君」に期待をを押し付け我慢させてしまっていたあの時と全く同じことをしているのじゃないか。これはあの頃の罪の繰り返しではないのか・・・?”

主人公は、自分が過去と同じ「罪」を繰り返してしまっていることを強く感じています。
だけれども、「君」を求める気持ちを、もはやどうすることもできません。
たとえ「罪」を繰り返してでも、「君」に会いたいと強く思っているのです。

そして彼は「やめた煙草に手を出すよう」な罪悪感を抱きながらも、「君に電話をかけて」しまいます

「髪型変えた 君はあらわれ ときどき見せる 笑顔は変わってない」

ついに二人は再開します。
かつて、自分を暖かく迎えてくれた時と変わらず、「君」は優しい「笑顔」を見せてくれました。

「やりたいことをやるためだと それぞれの道を選んで 別れたことを もうすっかり 忘れてしまいそうな時間が続くよ」

自分を暖めてくれる居場所を失い、孤独と虚しさとを強く感じていた彼の中で、優しい「君」の存在が再び大きくなりはじめます。

 “傷つきながら、苦しんだすえの決断で僕たちは「別れ」を選んだ。一緒にいることよりも、それぞれに「夢」を叶えることを選んだのに、それを忘れてしまいそうなほど、狂おしく「君」を求めてしまう。それが「完全に僕の罪」であることを分かっていても、この気持ちはどうすることもできない。”

しかし彼はふと、自分が「君」を求める気持ちは、昔と同じ恋愛感情なのか?という疑問を感じます。

「しっかり君をつかまえろと 誰かが僕にささやくけど 何かが違うと感じるのは ただ僕が臆病なだけなのか」

彼は「君」の存在の大きさを感じながらも、「君」と恋人としての関係を再び作ることに対して違和感を覚えています。

“「何かが違うと感じる」原因は、「罪」を繰り返してしまうことを怖れて「僕がただ臆病」になっているだけなのだろうか?そうではなく今のこの気持ちが、「君」への恋愛感情ではないからじゃないのか・・・?いったい、この気持ちは何なんだろう・・・?”


SCENE2-2.『 Love is ...』
 “なぜ、僕はこんなにも君に会いたいと思うのだろう。”
 主人公は自分の気持ちを問います。
“過去の気持ちが忘れられるほど、「時は十分に過ぎてない」から、君に再会してしまったことで、僕は今また君に「恋」をしているのか。―でも、それは「何かが違う」。”

しかし、彼は「何かが違う」とぼんやり感じつつも、しかし“恋ではない”と、はっきり断定することもできません。
 “この気持ちは「恋」ではなく、「愛」なのか?それとも?”

彼は「いつかのメリークリスマス」に、「人を愛するということ」に気付いたはずではなかったでしょうか。「人を愛するということ」とは、自分が誰かを心から必要とし、決して失いたくないと思うこと。そして、自分自身が、誰かの安心できる居場所となることだと。

“もともと「会いたい」という僕の気持ちは、一方的な「僕だけのフライング」だった。君が僕を必要としていたわけではなかった。やはりこの気持ちは、「居心地のいい場所だけ」を求める身勝手でしかなく、「愛」とは呼べないものなのだろうか。だけど、確かに僕は君を必要としている。この気持ちは「愛」ではないのか?・・・僕はそもそも、本当に「愛」というものを知っていたのだろうか・・・?
「Love is...」―愛とは・・・?”

「Love is...」、彼は、このあとに言葉を続けることができません
「いつかのメリークリスマス」に、確かに彼は「人を愛するということ」に気が付いたはずでした
しかし、彼は今、「愛」というものが分からなくなっているのです。
 “「人を愛するということ」とはいったい・・・?そして「君」を必要とするこの気持ちは何なんだろう・・・?”
確かな答えは出せないまま、「君」との冬の日々は続いていきます。


⇒第二回 SCENE3. 『恋じゃなくなる日』

参考作品
アルバム『FRIENDS』(作詞 稲葉浩志 1992)

2002年12月18日に掲載したものを2017年3月20日に再掲載した。

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